2008年12月28日日曜日

江戸の敵を長崎でとる(黒澤世莉)

演出ノート03
「江戸の敵を長崎でとる」

こんばんは。黒澤世莉です。「proof」では演出をやっています。完売御礼、心からありがとうございます。
さて、今回は「proof」という戯曲について書きます。

2007年、私のやってる「時間堂」という劇団で、「一週間公開稽古をして、最後には公演をする」という企画をやりました。「おやつの時間堂」という名前で、「proof」という戯曲を取り上げました。そのときから翻訳は谷賢一さんです。コロブチカ版は時間堂版より推敲をかさねて完成度が高くなっています。出演者は、清水那保さん、玉置玲央さん、足立由夏さん、根津茂尚さん。今回のチームに勝るとも劣らぬ、強い個性を持った良いチームでした。私にとっても意味深い企画で、それは色々な理由があるのですが、くやしかったのですね。

理由はいろいろありますが、あえて二点上げるとすればそれは「脚本の強度」と「俳優の密度」が共に高かったことが大きかったのだと思います。私は演劇の現場大好きっ子なので、演出できていればある意味幸せという簡単でおめでたい人間なのですが、その充実の度合いはやはり「脚本」と「俳優」に左右されます。その両方が素敵なのに、企画公演だから作り込めない、可能性が見えているだけに残念でした。

いづれ再び取り組みたいと思っている家に、縁がなく月日が流れていたところ、今回のプロデューサー、コロさんから演出の話を持ちかけられて、何十冊かの候補戯曲の中からコロさんが選んだのがこの「proof」でした。キャスティングも素敵になり、私としては2007年にやりのこしたことを2008年にケリを付けようと思ったのです。

一つの作品を違うキャストで演出した経験は何度かあります。そのたびに、作品は別物になるなあ、と思います。同じお話から出発しても、出演者が変われば印象も変わる。それは旅をしていて、目的地が一緒でも、同行者が変われば旅の思い出が変わるようなものです。それが演劇の面白いところです。

ここまで書いて、あんまり戯曲の話をしていないことに気がつきました。
ええと、とっても良い戯曲です。そしてそれを生かす翻訳もいい。谷賢一さんは文学者として鋭い感性を持っていて、本当に素敵な筆野郎です。2009年1月にも谷さんの戯曲を演出するのですが、これもいい話で、本当に楽しみです。

結局、戯曲の本質的なしかけや構造の話はできませんでしたが、まあ結論から言えば私はこのお話が好きです、前回も今回も関わってくれたみんなありがとう、ということが書きたかったのです。

次回演出ノートは、気が向いたら書きます。だってあと二日しかないんですもの。