2008年12月29日月曜日

作品の主題(黒澤世莉)

千秋楽の公演前に、このエントリを書いています、演出の黒澤世莉です。
演出家なんてもの、この期に及んではうろうろしても仕方ないので、裏方スタッフさんの邪魔にならないように、ちょこんとしています。

連日たくさんのお客さまのご来場、暖かいご批評、ありがとうございます。

私は、その公演の主題を、稽古が始まる前に決めません。演劇にとっては、演出家の頭の中でうんうん唸って考えたアイディアよりも、現場で俳優を通して、脚本をたちあげていったときに現れるものが重要だからです。

今回稽古を進めていくうちに見えた主題は、一人の女性の依存と自立の物語です。
天才数学者の話であり、家族の話であり、恋人の話ですが、芯にあるものは、一人の女性が自分の足で立ち上がるまでのお話なんじゃないかな、と思うのです。

「proof」という脚本が本質的に持っている可能性は、他にもいくつもあるとおもいます。しかし、コロブチカというチームにおいては、「自立」という言葉がもっともしっくりきました。

「自立」するということは「孤独を引き受ける」ことなのだと思います。私たちは2時間20分かけて、一人の女性が愛情や憎しみを抱きつつ、孤独を引き受けていくさまを、お客さまとつくっていきます。

今日も素敵な公演を、お客さまとつくれますように。